「美しい国」へ

 私が通っている図書館の下の階には最新のニュースを伝える電光掲示板のついた自販機がある。今日、その前を通りかかったところ、老人2人が自販機の前でこんな会話をしていた。

 

 「書類を書き換えちゃうのはいくら何でもマズいよね。」

 「うん。まさかこんなことをするなんてね。」

 

 今、森友学園との土地取引に関する財務省の決裁文書が改竄されていたと問題になっている。これらは財務省理財局の指示で行われていたとされているが、森友学園と安倍政権との蜜月関係から財務省の意思のみで行ったとは考えにくい。

 今回、書き換えを行った箇所は政権中枢や与党に近い政治家たちの名前など数十か所に及んだ。この中で極めつけは昭恵夫人から「いい土地ですから前に進めてください」というお言葉をいただいたとの学園側の発言が削除されていたことだ。一体、誰がそんな指示を出したのかは容易に想像がつく。
この国はこんな国だったのかのだろうか。

 私の家には教会の関係で韓国本土の人たちがよく遊びに来ていた。彼らはよく「日本は民主的で良い国ですね。それに引き換え韓国は・・・・・。」なんて言っていた。その言葉の意味が分からなかったが、韓国の現代史を勉強していくうちに政権に近い人たちだけが利益を得ることが韓国では日常茶飯事だったことを知った。もしかしたら、私の両親がいち早く日本に帰化する手続きを取ったのはこんな話を聴いていたからかもしれない。今では全く立場が逆転してしまったがそんな時代があったのだ。

 私が帰化してからしばらくして、日本では「改革」という言葉が流行り始めた。

 

「日本は海外と同じように規制緩和をし、無駄を無くさなければいけない。」

「日本では官僚が政治家以上に力を持っているので、改革してその関係を改めなくてはいけない。」

 

そんな言葉を国民は支持し、政治家たちも競って、「改革」を語り、それを実行していった。そんな中で安倍首相が現れた。拉致問題における姿勢で脚光を浴びた彼は熱狂的な支持の下で「改革」を推し進めた政権で重要ポストを担い、首相にまで上り詰めた。彼が第一次政権を率いる前、『美しい国へ』という本を出版した。実は私も持っていたのだが、内容は如何に日本の歴史や伝統は素晴らしくそれを引き継がなければいけないかと語っているものだった。

 安倍首相が「伝統」を重んじていることが良く分かる。かつて栄光ある大日本帝国では政府要人に近い政商たちに格安で国有地を売っていたし、アメリカとの戦争のときには「敗北」を「転進」と言い換えて、何も知らない国民に伝えていた。彼のやっていることもまさに同じことだ。思想的に近い「友人」に格安で国有地を売りさばき、内閣官房長官には国民向けに「改竄」したことを「書き換えた」と言い換えた。

 彼の言っていた「美しい国」とはこういうことだったのだ。

私は安倍首相にこんなエールを送りたい。

「日本の伝統を引き継いだ安倍首相頑張れ!

安倍首相頑張れ!

自分か自分の妻がこの事件に関与していたら国会議員も辞めるという国会答弁良かったです!」

きっと昭恵夫人も「いいね!」をしてくれるだろう。

 安倍首相があれだけ言っていた明治150年に日本の憲政が崩壊していることが分かるなんて夢にも思わなかった。どこかのRPGゲームよりももしかしたら現実の方がゲームらしいかもしれない。この手のゲームをしているといつも「ここだ!」というところでセーブすることができない。私の友人の中に強引な方法でセーブデータを書き換える奴が居たが、そういう手を使う奴のセーブデータは壊れてしまう。

 ゲームの中ですら強引な「書き換え」は許されないのだ。