誰がために金はある

 昨日はサッカー東アジアカップの日本代表VS北朝鮮代表の試合だった。

試合のペースは完全に北朝鮮代表のものだったが、終了直後の井手口のゴールで日本代表は勝利した。
 この試合で北朝鮮代表のサッカーが良く機能したと感じた。

カウンターアタック主体のシンプルなサッカーは何度か日本代表のゴールを脅かしていた。

 しかし、日本代表の内容はというと・・・・・。

敢えて、言わないでおこう。

サッカーは内容ではなく、結果であるという言い方もできるのだから。

 私はこの試合を良い気持ちで観ることが出来なかった。

日本代表が酷い試合をしていたからではない。

今大会では国際情勢や国連の決議を踏まえて、北朝鮮代表に賞金を払わないとしたからだ。

 本当にこれで良いのだろうか。

 今の朝鮮半島情勢は最悪の状況だ。

1994年の核危機以来、情勢は緊迫化している。

北朝鮮はミサイル実験を続け、アメリカもかなり本気で北朝鮮のミサイル実験に対応しようとしている。

更に近年では、蜜月状態と言われていた中国が北朝鮮に対して強硬な姿勢も見せている。

 こんな緊迫からか日本国内における北朝鮮報道は精緻に分析されたものとは言えない。

ここ最近、日本海側で見られる北朝鮮の漁船に関する報道がされているが、北朝鮮の現状を反映しているものとは言えないし、一部では北朝鮮のスパイではないかという噂すらある。

 ちなみに私は北朝鮮が嫌いだ。

私は朝鮮戦争朝鮮人民軍に親族を殺された立場なので、あの国を「祖国」として是認したくない。

北朝鮮を「祖国」している「同胞」たちを見て、「あんなことした挙句に独裁者が人民苦しめてる国の何が祖国だよ。」と思っているぐらいだし、ニュースで北朝鮮に関する報道を見ているだけで感情的になる。

 だが、そんな私でもサッカー北朝鮮代表は全く別だ。

なんだか分からないけれども、あの国のサッカーには惹かれる。
古いサッカーだが運動量も豊富で、選手たちの技術も素晴らしい。
どこかこのチームにある固ささえ無くなれば、北朝鮮代表はアジアで一番になれると思う。

 もう遠い記憶になってしまったが、かつて、北朝鮮代表はアジアの強豪として知られていた。

1966年のサッカーワールドカップイングランド大会では、予選を突破し、当時、優勝候補とされていたイタリア代表を破って、得点王に輝いたエウゼビオが居たポルトガルと死闘を演じ、ベスト8に輝いた。

北朝鮮ではその時のイレブンは伝説とされているらしい。

    それくらい実力がある素晴らしいチームなのだ。

   「北朝鮮嫌い」が増えていく中で、実はこういう入り口からまた別の北朝鮮が見えてくるのではないか。

北朝鮮には独裁者が居て、強権的な政治を行い、また、国際秩序に反するような行為を繰り返している。

だが、サッカーを通じて、北朝鮮の別の面を知ることができるかもしれない。

   サッカーは世界を平和にする。

ワールドカップ開催中は世界中の戦争が止まるというし、サッカーを通じた交流によって、新しい関係が生まれる可能性もある。

   今のこの緊迫した状況だからこそ、北朝鮮代表を受け容れ、優勝したら、賞金も払うべきなんじゃないだろうか。

   戦争では多くのお金が使われるが、結果として、破滅に向かっていく。

   もし、北朝鮮代表が優勝したら、それは強化資金として使われることを望む。

    兵器に金を支払うよりも北朝鮮で代表を夢見る子供たちのために使った方がよっぽど良い。