トカゲの本体を捉える

   森友学園の籠池理事長がとうとう国会に証人喚問された。

   当初、当事者の自民党は証人喚問に反対していたが、首相を侮辱したという前代未聞の理由で、野党が提案した証人喚問に賛成し、籠池理事長は国会の場に立って、証言をすることになった。

   5年ぶりに開かれた証人喚問を私もお茶の間で見守っていたが、与党がひたすら籠池理事長をペテン師のようにしようとしていたことと籠池理事長が安倍総理以上に国会答弁を上手くこなしていたことが印象的だった。

   こんな前代未聞のニュースに出会う時、私たちみたいな立場はうっかり、この籠池理事長の堂々とした答弁に目がいってしまう。

それはある意味ではしょうがない。

何せ、今の総理も防衛相もろくすっぽ答弁ができないわけだし、悪役として登場した籠池理事長がまさかここまで堂々と何かを語ることは今までの証人喚問からも想像できなかったことだからだ。  

   しかし、この籠池というおじさん、やはり、相当やばい人間であることには変わりがない。籠池氏の森友学園では園児たちに教育勅語を暗唱させ、自衛隊のOB組織で軍歌を演奏させていたし、外国籍の保護者が居るにも関わらず、人種主義的な文章を園内で配布し、更には園児への虐待行為も行なっていた。

   そんなことを平然と行なっていた人が国会の場で総理よりも理路整然と答弁するとこうもマトモに見えてしまうのは何のロジックなんだろうか。何か私は籠池理事長に幻を見せられているような気になってしまう。

   そんな籠池理事長がここまで暴露できたのは籠池理事長を応援していた「先生方」への恨みなのだろう。

   森友学園の実態が公になったと同時に籠池理事長を応援しているはずの「先生方」が一斉に手を引いたことは、きっと籠池理事長にとって、「裏切り」と映ったに違いない。

   私たちはついつい、このエキセントリックな理事長に目が向きがちだが、このエキセントリックな理事長が実際にやっていた教育を支持した偉い人たちが居たことを忘れてはいけない。

森友学園のパンフレットには書店で見かけるような学者や評論家たち、さらには明らかに公人なんだけれど、閣議決定で私人とされたあのお方の写真と森友学園の教育方針に賛同するコメントがあった。

   勝手に使われたとする考え方もあるが、勝手に使われるにしても人を集めるまでの効果もないし、何より「私人」であるあのお方は旦那の部下と一緒に視察という公的行為をしていたんだから、勝手に使われたも何もないことは明白だ。

   この幼児虐待が行われていたこの学園を様々な人が支持し、この事件が発覚したのと同時に手のひらを返した事実は覆らない。

そして、この学園で行われていたことを「私人」であるあのお方やあのお方の旦那は承知していたのだろうか?

それを承知した上でもし、あの学園を応援していたとしたら。

こんな奴を国のリーダーにしていたのは本当に情けない。

これからを担う未来をぞんざいにする奴を応援したんだから。

   トカゲの尻尾切りはこうやって行われるのか。でも、トカゲの尻尾切りで終わっても所詮、尻尾しか分からない。

私たちが知りたいのは本体の方だ。